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第3回 環境と微生物について

 「環境と微生物」の間には切っても切れない関係があります。
 地球には「自浄作用」というものがあります。この「自浄作用」の多くは微生物が担っています。これは公害防止管理者の試験勉強等でみなさんご存じのことでしょう。
 この自浄作用を活発化させたものが微生物を利用した環境技術になります。
 例えば、廃水処理業界でもっとも広く普及していると思われる生物学的な環境技術である「活性汚泥法」。これも好気性(酸素がないと生きていけない微生物)を活性化させて廃水を処理する技術です。
 *参考 活性汚泥動物園(http://www.siset.or.jp/doubutu/menu.htm)ここでは活性汚泥法で働いている微生物たちを観察することができます。
 微生物について詳しく知るということは、環境技術を語る上でなくてはならないものであると私は考えます。
 それはなぜか?と言いますと、非常に簡単な話で
   環境浄化に微生物を使っている → 微生物について知りたくなる
これが技術者の正常な関心なのだと思います。
 1990年代ごろまでは、環境技術者が装置中の微生物について詳細を知ることは非常に難しい状況でした。「顕微鏡でのぞく」「微生物の性状を調べる」「コロニーを作らせてみる」程度の調査しか行えなかったのが現状だと思います。もっと微生物学的なアプローチをしたくても、これは「生物学者の仕事」で、環境技術者の仕事ではないと思われがちな雰囲気があったのだと思います。
 しかしながら、近年の分子生物学的技術の発展はめまぐるしい物があります。
 例えばPCR (Polymerase chain reaction)法などの技術が非常に身近になり、一般の環境技術者にも適用可能なほど一般的なものとなりました。PCR法で増幅させた遺伝子の配列を読んだり(シーケンシング)、電気泳動などを利用して分離してみたり様々なアプローチで研究が可能になったわけです。


 このような分子生物学的な手法を用いれば
  • どの微生物が
  • どこで
  • どのくらい
働いているのかまで推測することが可能です。
 微生物を利用している環境技術者にとって、これほど興味深い事はありません。
 例えば、硝化槽のなかで硝化を担っていると思われているNitrosomonasNitorobacterが存在しているか?存在しているのならどこで、どのように?ということが理解できるようになってきたわけです。
 *参考 PCR (Polymerase chain reaction)とはある微生物に特異的な遺伝子の断片 (プライマー)を利用して、その微生物のみの遺伝子を増やすことができる手法です。ここでは詳しくは説明いたしませんが、遺伝子の部屋
(http://www.mls.sci.hiroshima-u.ac.jp/smg/education/gene_main.html)
のホームページを見ていただけると理解できると思います。


 話は急に変わって申し訳ないのですが、微生物について研究することにはさらに意義があります。
 特に私がこれから重要だと思うのは「微生物資源」と言う考え方です。
 これは、おもしろい遺伝子や性質を持っている微生物を利用してやりましょう!という考え方です。

 例えば、「環境関連で言いますと、難分解性の物質を分解する微生物もたくさん発見されています(例えばプラスチック)。
 こういう微生物を直接利用したり、難分解性の物質を分解するのに関係している遺伝子を特定し、他の微生物に組み込んだりして利用する事も可能になるかもしれません(一部では行われています)。

 このように環境と微生物は切っても切れない関係にあります。

 環境の専門家を目指している皆さん!
 微生物からのアプローチも可能です。是非考えてみてくださいね。
 (私事ですが、大学院で微生物から環境問題へのアプローチを試みていました)


(管理人 めたのさえた 2006.08.06掲載)


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